先日、あるニュースが目に止まりました。
横浜市で築60年近いマンション団地が、20年以上の議論を経てついに建て替えを成し遂げたという話です。
総戸数456戸、関わった住民は数百人。その全員がなんらかの形で「決断」をした。という記事。
不動産の仕事をしている私には、これは遠い話には聞こえません。
日本全国に、老朽化したマンションがどんどん増えている。
2023年時点で築40年を超える分譲マンションはすでに130万戸を超えているとも言われています。
人口が減り、空き家が増え、まちが縮んでいくなかで、「誰がどうやって建て替えを決めるのか」はこれからの日本が避けて通れない問題。
そしてそれは、都市だけの話ではありません。
💨業者が突然撤退した日
この団地(横浜市青葉区・桜台団地)が建て替えを検討し始めたのは2004年のこと。
ディベロッパーにコンサルティングを依頼し、いよいよ動き出した矢先に、リーマンショックが起きました。
そのディベロッパーは、管理組合に何の説明もないまま撤退してしまったのです。
この一件で住民は「建て替え派」と「修繕維持派」に分断され、検討を始めてからその後8年間、事業はほぼ止まったままになったそうです。
読んでいて、ぞっとしました…
「プロに任せておけば大丈夫」という思い込みが、いかにもろいか。
住民が主体性を持たないまま外部任せにした結果、当事者意識のない8年間が生まれてしまった。これは他人事ではないと思います。
💫成功の鍵は「賛成させない」ことだった
その反省から立ち上がった管理組合が徹底したのは、「中立・透明性を重視した情報提供」でした。
建て替えのメリットだけでなく、デメリットも修繕という選択肢も、すべて同じ重みで住民に提示。
そして何より印象的だったのが、この方針です。
普通、建て替えを推進したい側は「賛成を集めること」を目標にします。
でもここでは違ったんです。
目標は「全員が棄権せず、自分で決めること」でした。
全組合員との個別面談を2回実施し、建て替え決議の総会を1年半延期してでも、一人ひとりの不安に向き合い続けた。
結果、最終的な棄権者は数百人中わずか7人。
それだけの合意が、強引な説得ではなく「ドライな情報共有」によって生まれたという事実は、私にとって驚きでした。
1人1人に向き合うってことがいかに大切か。考えさせられました。
🤔福島で、このことを考える
私が暮らす福島にも、古いマンションや団地は多いです。
もちろんほかの都市も例外なく。
震災後の復興で新しい建物も増えましたが、それ以前に建てられた集合住宅はいまも多くの人の生活を支えています。
でも「建て替えをどうするか」という話が、住民レベルで議論されているケースはほとんど聞きません。聞こえてこないだけでやってるかもしれませんが、限定的でしょう。
それは無関心というより、「誰かがどうにかしてくれるだろう」という意識の問題かもしれません。
桜台団地も、最初はそうだったのだと思う。
管理組合が存在しないまま数十年が過ぎ、できた頃には住民の多くが「管理なんて自分には関係ない」と感じていた。
でも、建物は確実に老いていく。そして判断を先延ばしにするほど、選択肢は狭まる。
そんな負のスパイラルに陥っていたような感じです。
💞「愛」があるかどうか、が問われている
この事業を長年支えた横浜市住宅供給公社の理事長は、こう語ったといいます。
「居住者の皆さんの桜台団地に対する”愛”を未来にどう引き継いでいけるかを、一貫して大事にしてきた」と。
すばらしい考え方ですよね。
20年かけてこの団地が証明したのは、「住民一人ひとりが当事者になること」が、どんな支援制度や法律よりも根本的な条件だということだと思います。
あなたの街の古いマンションや団地、住んでいる人たちはその場所に”愛”を持てていますか?
そして、いざというとき「自分で決める」準備ができていますか?
出典:住民の「愛」を未来へつなぐ | 最新不動産ニュースサイト「R.E.port」
【この記事を書いた人】本社 津嶋
