
「新築を建てれば安心」という前提が、いま静かに崩れ始めています。
ハウスメーカーの倒産が過去13年で最も多い水準に達し、海外からは日本の中古住宅の価値を再発見する声が上がり、そして新築を有利にしてきた制度そのものにも綻びが見え始めています。
これら3つが重なって、中古住宅市場には確実に追い風が吹いています。
🤔ハウスメーカーの倒産が13年ぶりの水準に

木造建築工事業を営むハウスメーカーの倒産は、2026年上半期(1〜6月)に118件発生し、前年同期からおよそ9割増えました。
資材費や人件費の上昇に加えて住宅ローン金利も上がっており、大規模な建売現場では計画段階と販売開始時のコストや購買層の見立てにズレが生じています。
1989年以降でみると、2004年の198件がこれまでの最多ですが、上半期だけで100件を超えたのは2013年(106件)以来13年ぶりの水準です。
倒産理由の内訳は、販売不振が85件(構成比72.0%)、赤字の累積によるものが20件(同16.9%)となっており、業績不振が大半を占めています。
新築を選ぶ最大の安心材料は「まっさらな状態から作れること」だったはずですが、契約してから完成までの間に施工会社自体が立ち行かなくなるリスクが、決して他人事ではない水準まで来ています。
✈️海外の目線が可視化する、日本の中古住宅の価値
一方で、日本人自身が当たり前すぎて気づいていなかった中古住宅の価値を、海外からの視点が浮かび上がらせている好例もあります。
1992年にストックホルムで生まれ、10代からファッションモデルとして世界を舞台に活動してきたアントン・ウォールマン氏は、2019年に日本へ移住して以来、日本各地の空き家を自らの手でリノベーションし続けています。
その様子はYouTubeでも発信されており、2023年には書籍『FREE HOUSES IN JAPAN』も自費出版しました。
彼が繰り返し語っているのは、欧米では「家を買う=新築を建てる」ではなく、中古物件を購入してリノベーションするのがごく普通の選択肢だという感覚です。
日本の空き家は、外国人の目には「格安で立地の良い物件を手に入れられる宝の山」として映っています。
人口減少下で新築が増え続けるという日本特有の構図に慣れきってしまった目には見えにくい価値を、外側からの視点が言語化してくれています。
🏠新築を支えてきた「制度」自体にも綻び

新築信仰は精神論だけで成り立ってきたわけではありません。
以前このブログでも触れた通り、日本の中古住宅の流通シェアはおよそ15%にとどまり、アメリカ(約80%)やイギリス(約88%)、フランス(約70%)と比べて際立って低い水準です。
この差の背景には、木造住宅を築22年でほぼゼロ評価にしてしまう建物評価の仕組みや、欧米では当たり前になっているインスペクション(住宅診断)文化の違いがあります。
こうした「中古は評価されない」という前提自体が、インスペクションや既存住宅の保証制度の広がりとともに、少しずつ揺らぎ始めています。
倒産リスクという外からの圧力と、価値の再評価という内側からの変化が、同時並行で進んでいる状況です。
💫【まとめ】中古住宅市場はどう動いていくか

新築のリスクが可視化され、中古の価値が再発見され、評価の仕組みにも変化の兆しがあります。
この3つが重なる今、中古住宅市場は単なる「安さ」の選択肢から、「安心して選べる住まい」へと位置づけを変えていく途中にあると見てよさそうです。
空き家の増加が続く以上、この流れは一時的なブームでは終わらない可能性が高いといえます。
❓よくある質問

Q. 新築の方が本当に安全なの?
A. 建物としての安全性(耐震性能など)は新築が有利な面もありますが、「契約先が完成まで存続するか」というリスクは近年むしろ高まっています。
安全性は建物の性能とは別に、施工会社の経営状態という軸でも見る必要があります。
Q. 中古住宅を選ぶときに気をつけるべきことは?
A. 建物の劣化状況を客観的に把握できるインスペクション(住宅診断)の有無や、旧耐震基準の物件かどうかを確認することが、失敗を避ける基本になります。
Q. 今後、中古住宅市場はどうなっていく?
A. 空き家の増加、新築のリスク顕在化、インスペクション文化の広がりが重なり、中古住宅への需要は緩やかに拡大していくと見られます。
【この記事を書いた人】本社 津嶋